特許コラム
2010年7月 5日 月曜日
審査請求料値下げへ
「特許審査料値下げへ
1~3割で検討 減免対象拡大も」(2010年7月4日 日本経済新聞朝刊)
「特許庁は、特許の要件を満たすかどうかの審査を求める際に個人や企業が納める審査請求料を引き下げる方針を固めた。電子化などで審査の作業にかかる費用が減っていることに加え、海外と比べて割高とされる点を見直す狙い。出願料や維持料は現状のままとする。
5日に開く産業構造審議会(経済産業省の諮問機関)の小委員会で審査請求料を下げる方向性を示す。具体的な下げ幅は、現在の平均約20万円から1~3割程度引き下げる方向で検討を続ける。中小企業向けの減免制度の対象拡大についても議論する。
・・・(以下略)」
というわけで、審査請求料の値下げが検討されているようです。
日本経済新聞に掲載された記事なので、ご覧になった方も多いでしょう。
これは朗報ですね。どのような形での値下げになるのか、もっと詳しい情報が入らなければ、まだ何とも言えないところもありますので、しばらくは具体的な情報を待ちましょう。
(追記 平成23年1月の新聞記事もご参照下さい)
→審査請求料金の引き下げの件
(追記 平成23年1月の新聞記事もご参照下さい)
→審査請求料金の引き下げの件
投稿者 八木国際特許事務所 | 記事URL
2010年7月 2日 金曜日
ブログのテーマ等
ブログを開始してほぼ1月となりました。
おかげさまで、と申しましょうか、徐々にではありますがアクセス数が増えてきており、ありがとうございます。
ところで、私は特許業界に長くどっぷりと漬かってきた人間なので、特に特許業界以外の人が「特許の何が分からないのか」が、あまりピンとこない部分もあります。
ですから、このブログでこんなネタを取り上げてほしい等の要望があれば、コメントでもメールででもご遠慮なく連絡下さい。
ちょっとでも皆さんの役に立つようなネタを取り上げられれば、と思っています。
宜しくお願いします。
投稿者 八木国際特許事務所 | 記事URL
2010年6月30日 水曜日
パラメータ特許
化学の特許で一番多く論じられていることの一つとして、「特殊パラメータ特許」があります。
これは、出願人独自の評価方法による数値限定を請求項に書いた発明です。
特許に馴染みの薄い方のなかには、何のこと? とおっしゃる方もおられるでしょうか。
具体的には、例えば、
「~(ここに一般的ではない測定方法が入ります)という方法によって測定された~値が○~○である樹脂組成物」
といった表現で記載された発明です。
これは、私が特許の世界に入った15年前より更に昔から既に議論の対象になっていた発明で、当時から色々と議論されていました。
その後、審査基準の改訂や知財高裁の判例などで、取り扱いの方針が固まってきた、という印象があります。
現在、パラメータ特許がどのように扱われているのか、パラメータ特許のメリットは何かという話は非常に話が長くなるので、また機会があれば何回かに分けて書かせて戴ききたいと思っています。
今回は、私が今までに扱った案件のなかで一番印象に残っているパラメータ発明について話をさせて戴きます。
それは、私が会社の特許部で特許の仕事をするようになって1年目の頃、他社の問題特許として挙がってきた案件でした。私のいた会社ではその特許へ異議申立を行うことになっていました。
当時の私はまだまだ新人で右も左も分からない人間でしたから、重要案件であるその件は先輩のベテラン知財部員の方が担当されました。しかし、自分の担当事業部の案件でしたので、書類は一通り読みましたし、そのときにどんなことが問題になっているのかは自分なりの考察をしていました。
その特許は樹脂に関する特許で、樹脂に特定の処理を行うと重合触媒が失活することで樹脂の性能が向上する、という内容でした。
この特許はその「樹脂のある性能」を特殊パラメータで表現して、「方法」ではなく「物」で権利化していました。ちなみに、処理工程は先行文献がまったくない方法なので、方法は誰が見ても確実に権利化されるような発明でした。
その特許に対しては7,8社からの異議申立があり、色々な角度からの異議内容での検討がなされたのですが、最終的に特許は維持されました。
その当時はそのようなことについて、「ふーん」という気分で見ていただけでした。
しかし、その後パラメータ特許の検討を行ったり、クライアントからパラメータ発明についての相談を受ける機会があったりするなか、思い返してみるとあの件は非常にすごい出願だったのではないか、と思うようになりました。
私は15年間特許の仕事をやってきましたが、その間、最も強力だと思ったパラメータ発明はあの件だったような気さえします。
そして、近年言われる「サポート要件」や審査基準に書いているパラメータ特許についての新規性・進歩性判断等もクリヤーできるんじゃないか、と思えるような内容でした。この当時は審査基準にパラメータ発明についての記載はほとんどなく、「サポート要件」の判例などまだ出ていなかった時代なのに、です。
では、あの件についてそこまできちんとパラメータ発明で権利化できていたのはなぜか、というと、やはり
「技術として優れていたから。そして、その技術を特許によって守るために何をすべきか、ということをきちんと考えて戦略的に対策したから」
ということではないか、と思います。
それが平成2年出願の案件でした。
そう考えると、パラメータ特許というのが古くて新しい問題であることが明らかだと思います。よりよくパラメータ特許を扱うには、判例や審査基準を真剣に検討していくことも重要ですが、それよりも、権利化したい発明の内容を真剣に検討すれば、理屈以外のところから正しい形が見えてくる面があるように思います。
本当はこの案件を具体的に挙げて内容説明できればいいのですが、まだ権利が存続している案件ですから、ここで内容を挙げることはしません。しかし、私自身がパラメータ特許の仕事をするときに、常に基準としているのがあの件になっているのは、今も変わりがありません。
投稿者 八木国際特許事務所 | 記事URL
2010年6月28日 月曜日
論理的思考について(よい弁理士とは?②)
弁理士は論理的思考ができる人でなければなりません。以前の「よい弁理士とは」というブログの中で、よい弁理士の条件として「論理的思考ができる」ことを挙げました。特許というのは「情」よりも「理屈」の世界ですから、理屈をうまく立てられる人でないと、仕事になりません。
では、論理的思考とは何かということですが、これがなかなか説明の難しいことです。
特許の世界の「論理的」というのは、普段、研究や開発をしている人が言うところの「論理的」ということとは、かなり違うことのように思います。
理系の論理と文系の論理は違っていて、研究開発の論理は理系の論理で、特許の論理は基本的に文系の論理なわけです。なにしろ、特許は「法律」の世界ですから。
でも、特許で扱うものは理系の研究開発結果なので、弁理士は理系の論理も理解していないといけません。技術が理解できなければ、特許についていい仕事をすることは難しくなるでしょう。
いうなれば、弁理士は理系と文系の思考の両方ができなければならないし、その二つをきちんと使い分けながら、仕事を進めなければなりません。
そういう意味では、優秀な弁理士とは思考が柔軟で複数の思考パターンに対応できるような複眼的な人間ということかもしれません。
ぱっと見ただけで、目の前の弁理士がそういう人なのかどうか判断する、というとなんか難しそうなことになってしまいます。
しかし、あまりにも偏屈で人の話を聞かず、他人のことを考えない自己中心的な人はそういう複眼的な思考は難しいのでは? という気がします。そういう意味では、冷静で感情的にならずに相手の立場を考えて人と接することが出来る人である、というのは重要な要素に思えます。
更に、私がかつて法律の本を読んだとき、その最初のところに、
「優れた法律家というのは常識人である」
というようなことが書いていたことを覚えています。研究者や芸術家とは違い、法律家というのは、奇矯な人であってはならない、と。
うまく説明できませんが、説得力のある言葉です。
ということで、「論理的思考ができる人」は冷静で常識人っぽい人であること、というのが分かりやすい基準になるのかもしれません。
なんかあれこれと書いた割には、ありきたりな結論ですね。
しかし、特許を弁理士に頼むときは、「よい弁理士を捕まえられるかどうか」というのがかなり重要になります。ですから、「つまらない結論」などといわずに、こういう基本的なところから弁理士を見極めるよう、頑張ることも重要ではないかと思います。
それにしても、こんな記事を書いてしまうと、「じゃあお前はどうなんだ」という自分で自分に突っ込みを入れてしまうわけですが、以前と同じように、「自分のことは棚に上げて」書かせていただきました。
投稿者 八木国際特許事務所 | 記事URL
2010年6月24日 木曜日
雑感
ブログを始めさせて戴いて、色々と真面目な話を書いてきたのですが、たまにはゆるい話もと思い、今回はちょっとした雑談を。
自分自身で今まで書いたブログを読み返すと、なんだか疲れて肩が凝ってしまったので、たまには息抜きも、ということで。
私がホームページ作成、ブログ開始という運びに至ったのは、深い考えがあったことではありません。まあ、私自身のやることは、大抵はそんなに深い考えがあってのことではないのですが。そもそも、事務所開設自体、それほど深い考えや戦略あってのことではありません。
前回のブログのなかで「日本の企業は「戦略」に弱い」と書きましたが、そもそも私自身、典型的な戦略に弱い日本人なわけです。
しかし、「戦略」なんて何もないなかで何となくブログを書いていると、それを通じて自分の考えが色々と整理されてまとまっていくのは事実です。そのことがこの先につながって「戦略」になればいいのか、とも思います。よく分からないままに色々と新しいことをやっていると、新しく見えてくることも出てきて、それが「戦略」につながって行くのかもしれない、と思ったりします。
企業が「特許戦略」を考えるのもそんな感じでスタートするのがいいのかもしれません。最初から完璧な「特許戦略」を構築しようと考えると、息が詰まるし、重くなりすぎる面もあるように思います。
とりあえず、目先のことをやって行きながら、少しずつ体系を作ってそれを「戦略」という形に仕上げていく、という長期スパンでの取り組みが必要かもしれません。
「ゆるい話」と書きつつ、なんだか堅いことをかいてしまいました。その辺も「戦略不足」ですね。
もっとゆるい話もそのうち、書いていければと思っています。
自分自身で今まで書いたブログを読み返すと、なんだか疲れて肩が凝ってしまったので、たまには息抜きも、ということで。
私がホームページ作成、ブログ開始という運びに至ったのは、深い考えがあったことではありません。まあ、私自身のやることは、大抵はそんなに深い考えがあってのことではないのですが。そもそも、事務所開設自体、それほど深い考えや戦略あってのことではありません。
前回のブログのなかで「日本の企業は「戦略」に弱い」と書きましたが、そもそも私自身、典型的な戦略に弱い日本人なわけです。
しかし、「戦略」なんて何もないなかで何となくブログを書いていると、それを通じて自分の考えが色々と整理されてまとまっていくのは事実です。そのことがこの先につながって「戦略」になればいいのか、とも思います。よく分からないままに色々と新しいことをやっていると、新しく見えてくることも出てきて、それが「戦略」につながって行くのかもしれない、と思ったりします。
企業が「特許戦略」を考えるのもそんな感じでスタートするのがいいのかもしれません。最初から完璧な「特許戦略」を構築しようと考えると、息が詰まるし、重くなりすぎる面もあるように思います。
とりあえず、目先のことをやって行きながら、少しずつ体系を作ってそれを「戦略」という形に仕上げていく、という長期スパンでの取り組みが必要かもしれません。
「ゆるい話」と書きつつ、なんだか堅いことをかいてしまいました。その辺も「戦略不足」ですね。
もっとゆるい話もそのうち、書いていければと思っています。
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