特許コラム
2012年3月 5日 月曜日
「百姓貴族」
「百姓貴族」の2巻(荒川弘 新書館)が出ましたね。
荒川さんといえば「鋼の錬金術師」で有名な方ですが、こちらのエッセイ漫画も面白いです。
荒川さんは北海道の十勝地方の農家の家の生まれで、この「百姓貴族」は農家での色々な経験をエッセイ漫画にしたものです。
日本について「均質な国」なんてことを言う人がいますが、そんなの「幻想」じゃないのか、ってことを考えてしまうくらい、この漫画のなかでは私の知らない世界が繰り広げられています。
農業の経験のない私からすれば、ぞっとするようなことが「当然のこと」として描かれていたり、改めて考えさせられたりするような話も多いです。「人は命を食べているのだ」とか「酪農の効率化は、命を操作すること」という重いことを、「そうしないと農家は生きていけない」という現場の事実を前提として描いています。
その言葉は重いものですし、正直、どんな理屈よりも圧倒的な説得力があります。
さらにはこういった話を堅苦しくではなく、笑い飛ばしながら面白く読めるように描いている、というのがすごいです。これを小難しい文章で堅苦しく書いてしまったら、読もうという人の数は激減するでしょう。書店でも平積みされていたということは、かなり売れ筋ということでしょうから、作者の意図は完全に成功しているということです。
こういう漫画が売れる、というのは健全なことという気がしますし、普段漫画を読まないような人でも読んで損はない、と思います。
これ以上この漫画の内容について書くよりも読んでいただければ、と思います。
あと、同じ作者の「銀の匙」(小学館)も面白いですよ。こちらはストーリー漫画なのですが、北海道の農業高校を舞台にしたもので、同じように深みを感じさせるものです。
「獣医になる夢を叶えるのに必要なもの」
という問いに対して、
「殺れるかどうか」
という答えというのはやはり「現場の意見」ですね。高校生の夢についての質問に対してはシビアすぎる回答です。
でも、そうやってシビアななかで生きている人たちがいるからこそ、私たちはこうやって生きることができるわけで。それに対して「かわいそう」と言うのは簡単ですが、その一方で「牛肉が高い」とか文句を言っているわけです。
なんにせよ、都合の悪いものからは目をそらして生きている、非農業の人間からすれば、色々考えさせられるところも多い漫画です。
投稿者 八木国際特許事務所