特許コラム

2011年11月20日 日曜日

特許法改正のこと


 先週、特許法改正の説明会に行きました。弁理士はこの研修が義務なので、義務を果たすべく受講しました。
 
 しかし、今回の改正に関しては色々と考えさせられました。
今回ほど「変な改正だなぁ」と思わされたのは、初めてです。いや、これまでの改正のときは私も知財経験が今よりも短かったわけで、ベテランの方は「変な改正」と感じていたことが多かったのかもしれませんが。
 
まず、1点目、これはほんとうに発明者の方々には注意事項となりますが、「新規性喪失の例外」について、「特許を受ける者の行為に起因して」新規性を喪失した発明については、新規性喪失の例外適用の対象になる、という改正がありました。
これを見ると、「じゃあ、プレス発表やらサンプル提供の前にあわてて出願しなくてもよくなったのか」と思うかもしれません。
しかし、出願時に「新規性喪失の例外適用のための証明書」の提出が必須である、という点は改正されていません。だから、その手続きをしなければ、結局、自分が行った「プレス発表やサンプル提供」で拒絶されてしまう、という状況は変わっていません。
 
まあ、「だったら、新規性喪失の例外適用のための証明書」を提出すればいいだけのこと、ということではあるのですが、しかし、この「証明書」ってのは、提出した後、どこかで誰かの役に立つものなのでしょうか。
 
実際にこのような適用を容易にしたいなら、新規性の基準を変えたらいいのに、と思わないでもないです。つまり、出願人自身が公知にした文献は新規性の基準の文献にならない、とすればいいんじゃないか、と。
審査実務としても、出願人が発表した学術誌やパンフレットのたぐいを、審査官が「先行文献」として引用しなくてすむだけのことですし、釈明が必要なら、意見書提出時に釈明させればいいでしょう。なぜ出願時に「証明書類」の提出を必須にするのでしょうか。その手続きが必要となっているせいで、結局、「新規性喪失の例外はできるだけ使わないように」という状況に変化はありません。
私も、この点については改正後も「出願するまでは絶対に秘密を維持してください」ということを顧客には言い続けると思います。だったら、この改正が世の中に対して与える意義は薄いと思います。それなら、何のための法改正なのでしょうか。
 
それから、もっと「あれ?」と思ったのは、訂正審判に関する手続の改正です。一言で言うなら、「こんなにレアなケースのために、こんなに複雑な規定にする必要はあるのか?」ということです。運用でうまいことやってくれればいいのに……というのが感想です。まあ、弁理士であってさえ、めったに関わることのない条文なので、実際に手続きをやるときは調べて進めないといけないな、ということですが。
 
これまで新聞記事で今回の改正法について読んでいたときは、ここまで「あれあれ?」という気持ちにはなっていなかっただけに、ちょっと残念です。


投稿者 八木国際特許事務所

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