特許コラム
2011年9月 9日 金曜日
米国の懲罰的賠償
少し法律の仕事をされた方なら、誰でも米国での三倍賠償のことはご存知だと思います。米国では故意による不法行為の損害賠償においては、懲罰的賠償の制度があって、特許訴訟の場合は最大で損害額の三倍の懲罰的賠償が発生する、というものです。
このことが米国で損害賠償額が高くなる原因の一つと言われています。
とまあ、これくらいのことまでは、ちょっと特許のことを齧った人なら誰でも知っているわけですが、そこから先となると案外みんな知らないですよね。
もちろん、私もこのあたりのことを詳しく勉強したことはありません。
そこで、先日、「懲罰的賠償」をテーマにした弁理士会の研修に参加してきました。
非常に面白く、有意義な研修会だったのですが、それと同時に
「勉強しなければならないことはまだまだ多いな」
とも思った研修会でした。
米国で懲罰的賠償によって巨額の損害賠償が・・・という話であれば、マクドナルド・コーヒー事件が有名ですよね。
マクドナルドのコーヒーを膝の上にこぼしてやけどをした、と訴えを起こして、270万ドルの懲罰的賠償を認めた、というアレです。
あのマクドナルド・コーヒー事件というのは、みんな、「アメリカのトンデモ事件」という解釈をしていて、アメリカはとんでもない国だ、という解釈をする人が多いようですが、専門の弁護士の先生から話を聞くと、それはそれで理屈の通った話があるわけですよね。
それに、270万ドルというのも、陪審員の評決であって、最終的にマクドナルドが支払ったのはもっと安いということですし。
私はそのあたりの話ちゃんと知らなかったので、そのお話の部分だけでも「へえ」と思って非常に勉強になった、と感じました。
詳しくは、こちらをどうぞ。詳しい経緯を読んでも、面白いので。
それにしても、そのほかの話も含めて色々と考えさせられた講習会でした。
日本人のアメリカ裁判のイメージというと、
「弁護士が多いから訴訟社会」「弁護士が成功報酬のみだから裁判が頻発」「陪審員制度だから、とんでもない高額の損害賠償額も出やすい」
という感じでしょうか。私もそういう「ネガティブ」なイメージを抱いていた面があるのは事実です。
しかし、こういった講習会で話を聞くと、アメリカの法制度にも「日本の法律」にはない「よいところ」があるのは確かに事実だな、と思いました。
「法律」なんて、人間の取り決めですから、「絶対的に正しい完璧な法制度」なんてものは存在しないわけです。日本の法律には日本の法律のよいところが、アメリカの法律のはアメリカの法律のよいところがあるのは、考えてみると当然のことです。
「懲罰的賠償」にしても、これを通じて「世の中をよりよくしていく」という思想が根底にある、というところは、機械的な処理をする日本の法制よりもよいところなのかもしれない、と思いました。
実際、マクドナルド・コーヒー事件の後に、マクドナルドは火傷をしにくいように、コーヒーの温度を下げるなど、多くの方策を取ったということですから、そのための「懲罰的賠償」ならそれはいいことだな、と思いました。
こういう、特許以外の法律のことももっと勉強しなければならない、と強く思った帰り道でした。
投稿者 八木国際特許事務所