特許コラム
2011年8月 3日 水曜日
ヒット商品を支えた知的財産
日本弁理士会ウェブサイト中に、「ヒット商品を支えた知的財産」というページがあります。
これは、読んでみると案外面白いですよ。
もちろん、弁理士会ウェブサイト上という「公の場」に書くことですし、企業側の承諾がなければ掲載できないわけですから、話が全体的に「きれいごと」に寄っている感は否めないですが、それでも、色々な商品について、各社がどんな特許を出していたのか等がわかります。こういうことが書かれたものは本当に少ないです。
特許の勉強ということになったときは、「理屈」から入ることになりがちです。しかし、「理屈」というのは頭に入りにくいものです。
「特許権取得による独占排他権に基づいて、競合企業が参入することができず・・・」
ということを文字面で読むよりも、現実に出ている商品にあてはめて考えたほうが興味もわくし、理解もしやすいです。
しかし、実際に特許の講習をするときに、このような商品についてはこのような特許があって……という話はなかなかできないものです。
どの特許がどの商品と対応しているか、ということは案外、弁理士には分からないものです。知っていたとしても、外部で話していいのかどうかが分からないことが多いです。
ということなので、特許の仕事をしている人でも、案外、自分が携わった特許と実際の商品との関係をちゃんと分かっていない場合は多いです。
そういう状況ですから、こうやって特許と商品の具体的なリンクをつけながら説明してくれる場、というのは本当に少ないです。それだけに、このようなページは貴重だと言う気がします。
例えば。
このコーナーの最初に載っているのは「雪見だいふく」の特許の話です。これは、誰でも知っている商品ですし、他社の模倣品が出ていない商品ですよね(特許は存続期間が満了して長いのですが)。
このような商品がどんな特許で守られていたのか、ということは興味深いと思いませんか? また、言ってしまえば、「大福の皮の中にアイスクリームを入れただけじゃないか。アイスモナカの外側を大福の皮にしただけじゃないか。そんなものに特許性があるのか?」、と言われそうなものについて、どうやって特許を取ったのか、という点も、気になりませんか?
実際、この特許の明細書を読むと、出願時点で色々と作戦を考えてうまいこと特許を取ったな、ということが読み取れます。
そういった、「企業経営とうまく結び付けた特許」という「成功事例」を読むのは面白いものですよ。
もちろん、その影にはその数十倍、その数百倍の失敗事例がある、ということも知っておく必要があるし「きれいな話」ばかりではなく「どろどろした話」もたくさんある、ということは認識しておいたほうがいいですが。
投稿者 八木国際特許事務所