特許コラム
2011年6月20日 月曜日
パテントハイウェイのこと
7月15日から、新たな特許審査ハイウェイ試行プログラムが開始するとの発表が特許庁ウェブサイト上でされていますね。
これまでもパテントハイウェイの制度はあったのですが、更に対象を増やすということのようです。
弊所でもパテントハイウェイについては何件か経験があります。で、やってみて思うのは
「面倒な面もあるし、思ったほど早く進まないこともあるけれど悪い制度ではない」
という感じです。
「パテントハイウェイってなに?」
という方のために簡単に説明しますと。
「とある国で特許を取得したら、その他の国で早期に審査を進めることができる制度」
ということになります。
包括的な条約があってやっているわけではなくて、ほとんどは二国間協議で行われているので、その全体像を完全に記憶するのは難しいです。しかし、特許庁ウェブサイトを参照すれば、それほど難しい内容ではありませんし、しょっちゅう変わるので覚える必要もないと思います。
パテントハイウェイを請求する条件としては、
①第1国出願が登録
②PCTの国際調査報告
という2つのパターンがあったのですが、今回の7月15日からの試行プログラムは、これらこれに加えて
③「PPH MOTTAINAI」試行プログラム参加国(日本、米国、英国、カナダ、オーストラリア、フィンランド、ロシア、スペイン)のいずれかで登録
という条件下で手続き可能になるようです。
これは、第1国の審査が遅く、その他の国で先に特許になった場合に有効となります。
パテントハイウェイでの審査を行うと、「どこかの国での審査の結果、特許性がある」と判断された材料を使うので、比較的特許になりやすいように思います。
但し、特許の審査は国ごとに別々となりますから、「日本で通って、パテントハイウェイを使えば、他の国も必ず通る」と断言することはできません。実際、他の国では日本より狭い範囲に限定することが必要となったケースもありました。
特に、PCT出願の国際調査報告で、厳しい先行文献が挙げられなかった場合に利用することが多いように思います。
すなわち、PCT国際調査報告の結果を添付して日本特許の移行を行い、早期審査すると、比較的早く日本特許を登録させることができます。それから各国での審査を行うと、短期間でスムーズに手続きを行うことができます。
登録される可能性が高いものについては、できるだけ早く登録してしまうことが好ましいのは、どこの国の特許であろうと変わりありません。
もちろん、費用の問題もありますから、「特許が必要かどうか分からない」国については「できるだけ決定を後にしたい」という気持ちが生まれることもあるでしょう。
しかし、「権利化が必要なのは間違いない」という国での特許について、「権利化される可能性が高い」のに、審査を遅らせてもあまりメリットはありません。
色々と社内事情もあるでしょうが、こういった制度もうまく利用していくのがいいのではないでしょうか。
投稿者 八木国際特許事務所