特許コラム

2011年6月11日 土曜日

生兵法は怪我の元

 ことわざシリーズ(?)です。
 「なまはんかな武術の心得に頼って事を起こすと、身を守るどころか、かえって大怪我をするということ。中途半端な知識や技術を振り回すと大失敗をするという戒め。」(創拓社『文芸作品例解 故事ことわざ活用辞典』)という意味です。
 特許の仕事に関しても、この状態に陥ることは非常に多いです。特に特許の仕事の経験が長くない弁理士の方などは注意して頂きたいです。
 
 今思えば、私もそんな時期がありました。特許の仕事に移って、2~3年位の頃です。思い出せば、その頃が一番危険だったように思います。
何が危険かというと、自分が特許の仕事について
「どこまで分かっていて、どこから分かっていないのか」
の境目が分かっていないんですよね。一応、ある程度のところまでは分かっているから、ある程度自分でできるという自負は生まれ始めた頃です。でも、隅々までは分かっていない。どこに落とし穴があるかも気付いていないんです。実際、そのせいで失敗してしまったことが何回かあったように思います。
 
 実際に「生兵法」で「怪我」を何回かすることで、「これはダメだ」と思い、分からないことはどんな小さなことでも本で調べる、誰かに聞く、という習慣を持つようになりました。
 
 特許の仕事ではあちこちに「落とし穴」があります。「落とし穴」というと語弊があるかもしれませんが。でも、「手続き上、失敗しやすいところ」というのは大体決まっているわけです。それは、案外難しかったり複雑だったりする場所ではなく、一見すると単純でつまらなさそうなところであったりします。
 ですから、中途半端に分かっている人ほど、失敗しやすいわけです。
 
 実際のところ、知財について隅々まですべてを完璧に理解・記憶することは困難です。日本だけでも滅多に出会わないようなレアケースというのはあるもので、ましてや外国の手続きも含めると、知らないことだらけです。
 私もこの一月ほどの間に、「初めて経験するケース」の手続きを2つ、相次いで経験しました。十五年ほども特許の仕事をしていても、そういうことはあるんだな、と妙に感心してしまいました。
 
 そして、そのうち一つについては、初めてだからと思って条文を読んで確認すると、それまで自分が知らなかったような手続きを行う必要があることが分かり、「へえ、こんな手続きがあったんだ」と初めて知ったことがありました。
 
 とりあえず、「初めて経験することがあったら、条文を読み直してもう一度確認すること」が基本ではないかと思います。
「自分は特許について、何でも知っている」
などと思い上がったことは考えず、細かな手続きでも(あるいは細かな手続きであるほど)初めてやることについてはきちんと条文を調べて確認することが重要だと思います。
 
 とはいえ、「一回くらいは怪我をしないと、生兵法からは抜け出せない」ということも言えるかもしれませんが。その怪我はできるだけ軽いもので済むように、注意して下さい。


投稿者 八木国際特許事務所

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