特許コラム
2011年5月 6日 金曜日
「起こりえない」こと
今日のネタは5月3日日本経済新聞、近畿経済Bの紙面中にあった記事です。
首都機能が必要か否かというアンケートに対する東京都の回答について
「東京全域を壊滅させるような災害は起こりえない」
との回答があったとのことです。
アンケートへの回答者が本当にそんなことを書いたのか? と疑ってしまうような記事です。今、この状態の中で、そんな頭の悪い回答をする人が存在する、ということに大変驚きました。そこでいう「起こりえない」という言葉の根拠がどこにあるのか、一度聞いてみたいものです。
「××ということは起こりえない」という言葉は、何かをやる上で口にしてはいけない言葉だと、今回の震災で思い知らされた人は多いのではないでしょうか。あんな巨大な地震と津波は、「起こりえない」と思っていた人が大多数だったわけですから。
本ブログはあくまでも「特許ブログ」なので、政治的・政策的なことにはこれ以上言及しません。
以下、知財の話、会社での事業展開という観点から、この話を少し広げさせて戴きます。
「××ということは起こりえない」と誰かが言うとき、ほとんどの場合、そこに「私利私欲」が混じっている、と私は思います。
「××ということが起こる可能性がある」と想定してしまうと、その対応のために金や手間がかかったり、自分がやりたいと思うことができなくなったりするでしょう。
上のケースであると、
「首都機能が分散してしまうと、東京の経済が縮小する恐れがあるから困る」
という考えが透けて見えてしまいます。というか、「東京全域を壊滅させるような災害は起こりえない」と主張する根拠を論理的に示してもらわない限り、そうとしか見えないです。
でも、それは単なる「私利私欲」です。
「私利私欲」といわれたくないなら、「災害のリスクを考慮しても、首都機能を集中させなければならない」とする理由を主張して欲しい、と思います。
これを特許問題に当てはめてみましょうか。
「○○という商品を販売すると、特許侵害が発生するかもしれない」と想定してしまうと、その対応のために労力・金がかかりますし、会社の上層部の説得も大変でしょう。下手をすれば○○という商品の販売が会社の上層部の判断でストップしてしまうかもしれません。
そのせいで、「特許侵害は発生しえない」という言葉で、これらの問題から目をそらす、という状況が発生しがちです。
結局、その姿勢が何よりも危険だと思います。
最初から「特許問題が発生する可能性がある」という事態を想定しながら、コトを進めていれば、実際に特許問題が発生した場合も小さな被害で済む可能性が高くなります。
それがリスクの認識とその対策、ということでしょう。この感覚を鋭くしていくことは大変難しいことですが、それは企業経営に関わる全ての人が(そして、行政に関わる人達も)真剣に考えなければならないことだと思います。
投稿者 八木国際特許事務所