特許コラム
2010年12月22日 水曜日
アメリカのこと
新聞や雑誌を読んでいて、日本の現状批判をしているものを見ることがよくあります。
そういう話ではすぐに「アメリカと比べて」という話になりがちです。
しかし、アメリカと比べるのは妥当なのでしょうか。
と、えらそうに書き始めましたが、私もアメリカについて、さほど詳しいわけではありません。アメリカへは特許事務所勤務時代、出張で一度行ったきりです。アメリカ文化に興味があるわけでもないし、アメリカの音楽も映画もほとんど興味がありません。
しかし、特許事務所をやっているとアメリカ特許を扱うことがよくあります。その関係でアメリカ人とやりとりをしたり、日本に来た米国の特許弁護士と話をしたり、アメリカの判決を読んだり、という機会があります。
そういう経験のなかで思うのは、「アメリカと日本は非常に大きく違っているけれど、別にアメリカのほうが進んでいるわけではない」ということです。
よく、「アメリカはこういう制度でやっているから、日本にも同じ制度を」ということを言う人がいますが、日本は根本的に法体系がアメリカと違う国なので、「参考にならない」ということを思います。
何がそんなに? ということですが。
とりあえず一つだけ言えるのは、英米の法体系は日本の法体系とは根本的に違います。
と、偉そうに書いたものの、その違いの本質は何か? と聞かれると私もうまく説明できません。今、ウィキペディアを見ると、ローマ法に基づいてヨーロッパ大陸に広がり、それが日本にも伝わった大陸法と、イギリスで全く別個に発展した英米法があって云々という話です。このあたりも非常に興味深いのですが、私自身説明できるほど詳しくありません。
実際、特許の仕事をしていても、欧州特許の仕事をやると根本的な法律の考えが日本と同じだなと感じるのですが、米国をやると日本と根本的に違う、と感じます。
2007年頃の米国特許の規則改正にまつわる一連の出来事(何それ? という方のために、いずれ近いうちに何があったか本ブログで簡単に説明します)などは、日本では絶対に起こり得ないことでしょう。あの件等は、「日本と米国は根本的に違う」ということを思い知らされた事件でした。
やはり、成分法と判例法との違いは、大きいですよ。アメリカの特許制度があんなに非合理的に見えるのは、判例法のせいだという気がしますし、アメリカ人からすると、日本の法制度は融通がきかないものに見えるのだろうと思います。
昔、米国の弁理士と話をしているときに、
「この前米国特許法がこんな風に改正されたけれど、どう考えたらいいのか?」
と質問したら、
「判例が出ないとはっきりしたことは言えない」
ということを言われたこともあります。
とりあえず、アメリカ特許を扱う場合には、「日本とアメリカは全然違う」ということを頭に入れることが何より大切ではないか、と思います。
そして根本的な法体系が違うのだから、アメリカの制度を日本に取り入れるのは難しい場合もある、ということも考えておいたほうがよいのではないでしょうか。
投稿者 八木国際特許事務所