特許コラム
2010年12月14日 火曜日
現地で法務トラブル 7割
今朝(2010年12月14日)の日本経済新聞朝刊に、外国での法務トラブルに関する記事が出ていましたね。
「現地で法務トラブル7割 海外進出企業
主要な海外進出企業の7割以上が現地で訴訟や紛争などの法務トラブルを抱えていることが、日本経済新聞社が13日まとめた「企業法務・弁護士調査」で分かった。国別では米国と中国が群を抜き、訴訟・紛争を抱える企業の約6割に上る。案件は知的財産権問題が多い。(以下略)」
「企業は海外の法務リスクに対し、社内(従業員)弁護士を増やすなど法務部門の強化を始めた。海外のグループ会社と法務面の交流を進めるなど国内外で体制づくりを急ぐが、海外企業と比べるとなお対策が遅れている感は否めない。
(中略)これに対し、米マイクロソフトは全世界で約1千人の法務スタッフを抱え、その半数が社内弁護士だ。全世界の法務幹部は定期的に会合を開き、共通の法務戦略をとる」(日本経済新聞2010年12月14日朝刊)
前半は「ほうほう」と思って読んだのですが、後半の論評の部分を読むと、「ううむ」と思ってしまいます。
とりあえず、マイクロソフトのように、製品コピーが容易で海賊品が出やすく、全世界のあらゆる国で圧倒的なシェアを持ち、独占禁止法対策も極めて重要になる会社と、日本のメーカーとを対比することに意味があるのでしょうか(アンケート対象企業のほとんどがメーカーです)。日本にはマイクロソフトのようなタイプの会社は存在しないので、もっと比較対象になり得るような会社と比べるべきではないですか?
記事では日清食品ホールディングス、NEC、NTTデータの事例が書かれていますが、これらの会社はマイクロソフトとは業務内容も違うし、マイクロソフトの例は適切な比較対象とならないでしょう。これらの会社が目指しているところが「マイクロソフトのような会社」というわけではないでしょうし。
そもそも、アメリカというのは日本とは色々なことが違い過ぎるので、アメリカの事例は参考にならないことが多すぎます。例えば、アメリカの知財の現場で行われていることは、(経験された方は分かるでしょうが)日本では考えられないくらい、いい加減ですよ。「細かいことを気にするより、問題が起こったら訴訟で解決すればいいじゃないか」という考えのアメリカですから、特許審査はいい加減ですし、審査官もやることが雑です。きっと、知財に限らず万事がそうなのだろうと思います。
だから、米国では弁護士の活躍の場が多いわけです。万事が潔癖でなにごともきちんとやりたい日本を、このようなアメリカのやり方に寄せることは決してよいことではないと思います。
海外進出に際しては、日本のようには行かないことがあるから法務対策は重要、という結論は誤っていないと思います。しかし、そこに「日本は遅れている。アメリカを見習え」という論調を混ぜてこられると、急に説得力がなくなってしまいます。
機会があれば、米国特許について私が経験した事項の範囲内で思うところを書いてみたいとも思います。その辺を読んで戴くと、私の気持ちも分かって戴けるかもしれません。
投稿者 八木国際特許事務所