特許コラム

2010年11月29日 月曜日

「<反>知的独占」について


 先日、書店で見かけたとある本を買い、このブログで取り上げようと思いました。
 その本は、「<反>知的独占」 (ミケーレ・ボルドリン/デヴィッド・K・レヴァイン著 山形浩生/守岡桜訳 NTT出版;2010年10月29日;原著2008年)です。
 
 が、結局、この本を最後まできちんと読みきることはできませんでした。
 
 この本は、知財のことを経済学的観点から書いた本です。こういう本について本ブログ中で言及するのなら、安易な「感想」は書けないな、と読んでいる途中から思い始めました。
 知財に関することを書いた本についてブログに書くのなら、やはり「プロ」としての視点でしっかりした批評を書かなければ、と自分で勝手に思ってしまったのです。今まで、このブログでも本について触れたことはありましたが、それは所詮「感想」に過ぎないものでした。
 その内容を細部までしっかりと読んで、その内容について論理的に論評するようなことはしていません。
 しかし、今回、「<反>知的独占」の内容をブログで取り上げるのなら、「感想」レベルではない「論評」レベルで取り上げなければ、と思いました。
 
 そう思い始めると、なんだか本を読むのが妙に重くなってしまって、読んでいて楽しくなくなってしまいました。
 そもそもが、経済学の本なので、論理構成が私に馴染みのないものであるということもあり、私自身がのめりこめなくもなってしまいました。
 
「知的財産制度がないほうが、より効率的な産業の発展が見込まれる」
というのがこの本の趣旨であり、それは最初のほうで示されているわけです。
 
 それが真実かどうかは、最終的には知的財産権制度のない国家を作って試してみなければ分からないことです。
しかし、(当然のことながら)著者はその「実験」をやってこの本を書いたわけではありません。この本の著者はその結論をサポートする事実を多く挙げて、知的財産の問題点を指摘します。
 それは、一つの説として検討の余地があるとは思います。が、だからといって、今すぐに日本の知財権制度をすべて廃止する、ということにはならないわけです。現在、知的財産権が存在している世の中で、それなりの経済は築かれているわけですから。
 
 そこのところ、経済学というのは難しい学問だなと思いました。そして、これまで世の中で「天才」と言われた経済学者が作った理論が破綻する、ということ起こった理由はちょっと分かったような気がしました。
 実験せずに組み立てた理論はあくまでも「理論」でしかないわけです。
 で、それを現実に適用してみることが「実験」であり、やってみて初めてその理論の問題点が分かるわけです。が、「実験すると理屈どおりに行かない場合もある」ってことは至極当然のことです。
 
 こういった意味で、理系のなかでも「まず実験ありき」の考えが特に強い有機化学をやっていた私からすると、なかなか馴染めないです。理系でも理論物理や数学をやっておられた方なら、すんなりと馴染めるのではないか、という気もします。
 その辺り、私がこの本を「論評」できるレベルで読めなかったという理由です。大変残念に思います。
 
 「実験で確認できない経済学なんて学問として意味がない」なんてことを言ってしまうと、それは経済学を知らない人間の極論になってしまうわけで、そういうことは申し上げません。
それよりも、経済学をきちんと勉強している方が、この本を読まれたらどう感じるのか聞いてみたいと思いました。
 


投稿者 八木国際特許事務所

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