特許コラム
2010年11月17日 水曜日
議論における質問の重要性
特許庁面接において、こちらからできるだけ質問しながら話を進めたほうがいいんじゃないか、というお話を以前させて戴きました。
これは何も斬新なことを申し上げたわけではなく、論理術などの世界では「常識」というべきことらしいです。
実際、アメリカの大統領選挙での候補者同士の「対決」という場面での議論を見ていると、「質問」に対して「質問」で返す、ということが非常に頻繁に行われていて、ああいうものが、「ディベート」ということについて訓練を受けた人たちの「議論」なのだなぁと思ってしまいます。
あれは、いかにして自分が議論の主導権を握るかという争いをしているんだなぁ、と考えると納得です。
でも、あれは本質的な議論よりも、議論に関する技能を争っているという面が強い気がするので、そこはどうなんだろう、と思ってしまうこともありますが。
現在、論理学の本をまた読んでいます。それは、「レトリックと詭弁」(香西秀信著 ちくま文庫(2010年))という本で、その第1章の章タイトルは、「議論を制する「問いの技術」」とあります。
ここでも、「議論を制する」には問いを考えなければならないということがあるわけで、特許庁面接について書かせて戴いたことにもつながることです。
但し、この本で書かれているのは、「相手を追い詰めるような論理」である場合も多いので、決して特許庁面接などで使ってはいけない手法がほとんどです。むしろ、こういう言い方を避けることで、審査官を怒らせてしまうことのないよう、注意すべき、ということであるように思います。
更には、議論に際して、相手方がテクニカルな質問でこちらを追い詰めようとしてきたとき、身をかわすための手法として勉強すべきもの、という気もします。
この本の著者の香西秀信先生は、以前「論理病をなおす」という本について本ブログで取り上げさせていただきました。
本書でも、相変わらずゆったりとした冷静な語り口のなかから、鋭い議論が多く出てくるので、本当に楽しく読むことができます。素人にも分かりやすいように面白く「論理学」が勉強できるような本を書かれる、という点が好きなので、私は先生のファンです。
「レトリックと詭弁」も、非常に密度が濃く、かつ、面白い本なので読み終わったらまた本ブログで感想を書かせて戴きたいな、と思っています。
投稿者 八木国際特許事務所