特許コラム

2010年10月14日 木曜日

業界の変化


 この数カ月の間に、ファンケルがDHCを特許侵害で訴え、資生堂がマンダムを特許侵害で訴えました。つまり、化粧品業界で2件相次いで特許訴訟が提起されました。
 
 私はサラリーマン時代、化粧品の特許をメインの仕事の一つとしており、今もいくらか化粧品の特許を扱っているため、これらの事件については注視しています。
 
 それにしても、「業界は変わった」というのが正直な気持ちです。
 私が化粧品の特許の仕事をサラリーマンとしてやっていた頃は、化粧品会社で特許訴訟というのは、考えにくいことでしたし、実際、全く訴訟が提起されることはありませんでした。
 
 しかも、2件とも早期審査請求をしており権利化されてから訴えが提起されるまでの期間も長くありません。
 ということは、最初から
「この特許に抵触する商品が発売されたら、すぐに裁判を起こす」
という気持ちがあったのではないか、という気がします。
 
 特に資生堂は、ネットニュースの記事(時事通信社)によると
・2010年2月特許出願
・2010年5月特許登録
・2010年9月訴訟提起
という流れですから、この早さはかなり凄いです。特許出願から半年少しで訴訟に踏み切っているところに、本気度が感じられます。
 
 しかも、その特許の内容は処方特許です(資生堂は、訴訟の対象となる特許の番号を公開していませんが、特許庁電子図書館を見て推測されるのは処方特許です)。
 
 化粧品業界で出願される特許というのは、新しい有効成分の発見に基づく生理活性についての特許と、組成物としての性能についての処方特許が多数を占めます。
 化粧品は全成分表示が義務ですから、表示である程度まで組成が分かってしまう、ということがあります(「ある程度まで」ですが)。
 ですから、全成分表示が始まった2001年から、「全成分表示が始まったら訴訟が増えるのではないか」と噂されていました。
  それが、10年経った今になって現実のものとなっているのかもしれません。
 
 特許は「業界特性」が非常に色濃く存在します。「この業界では侵害が発生した場合には、このように扱われる」という業界内常識みたいなものが、いつの間にか形成されていることが多いです。
 化粧品業界も、こういった訴訟事件が起こると(しかも、その一方は業界トップの資生堂が原告ですから)、これによって業界内常識みたいなものが大きく変化していくのかもしれません。
 その意味では、特に「大型商品」という感じのものについては、これからこのような訴訟が普通になるおそれがあります。
 こういったときに、素早く会社の体制なりやり方なりを変えていけるか、ということが重要になります。
 
 ここでは化粧品業界のことを書きましたが、業界の状況が急に変わるのは他の業界でもいつ起こるか分からないことです。そのときに変化の流れに乗り遅れないことも重要になると思います。
 
 とりあえず、この2つの訴訟事件の趨勢については、今後も注視していきたいと思います。

(追記)
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投稿者 八木国際特許事務所

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