特許コラム
2010年6月16日 水曜日
よい弁理士とは?
「弁理士を探す」の項目を書いた際に、「どんな弁理士がよい弁理士なのか」が分からないと、弁理士を探すこともうまくいかない、と書きました。
では「よい弁理士とはどんな弁理士なのか?」と皆さん思われることでしょう。
そこで、「よい弁理士とは?」ということについて、書かせて戴くのですが……。
このブログでこれを書くのは自分の首を絞めないか、というおそれも感じています。ここであまり立派な条件を書きすぎると、それを書いている本人がその条件をまったく満たしていない、という悲しい状態になってしまう危惧も感じています。
が、それを言ってしまうと、「よい弁理士とは」ということについて、弁理士は議論できないことになってしまうので、今回は自分のことは棚に上げて、「よい弁理士とは」ということについて書かせて戴きます。よって、「お前はどうなんだ」というツッコミはなしでお願いします。
前置きはこれくらいにして、弁理士というのはほとんどの人が弁理士試験に合格して弁理士登録された方です。そして、その「弁理士試験」で試験されることは、法律科目となります。
しかしながら、弁理士の能力として必要なことは法律知識だけなのか、というとそうではありません。
日本語能力、技術知識、コミュニケーション能力、論理的思考能力、管理能力、交渉力等、色々と必要とされることがあります。こういった能力をまんべんなく持っていることが必要であり、どこかの能力が極端に低いと、他の能力がいくら高くても弁理士としてはどこか欠如している、ということになってしまいます。
これらのすべてについて、短期間で見極めることはできないと思いますから、まずは、特に重要な要素を説明しましょう。
それらのなかで、一番重要なのは、結局、コミュニケーション能力ということになるように思います。
結局、どこのどんな仕事でも一番重要だ、と言われてしまうコミュニケーション能力ですが、弁理士の世界でも最後はここに行きついてしまうように思います。
「顧客が何を望んでいるかを深いところまで理解して、顧客の希望どおりの仕事をする」ということが代理人の仕事の基本です。それができるかどうかは、特許法の知識とは別の話です。
更に、分かりやすい日本語で書面をまとめ上げる能力、というのは日本語能力であると同時にコミュニケーション能力でもあると思います。コミュニケーション能力が高い人は、日本語能力も高い場合が多いと思います。
ここでいうコミュニケーション能力とは初対面の人とスムーズに話ができるとか、場を明るく盛り上げるとかではないと思います。もっと単純に、仕事に際して会話のキャッチボールがきちんとできるということだと思います。実際、有能な弁理士の方には、普段は朴訥とした口下手な印象なのに、仕事の話になると一を聞いて十を知る、といった具合にこちらの意図をすぐに理解して効率よく進めて下さる方も多いです。
この人はコミュニケーション能力が高いだろうか? ということを判断するのは、特許の世界に限らず、どんな仕事をしていても必要になることです。ですから、「特許云々」ということではなく、純粋に「その人」の人柄を見る、という判断になると思います。そのことについてはあちこちで語られていることですから、今ここで私が長々と書くことでもないでしょう。
それから、技術知識は重要になります。現在、科学技術の分野は幾つかの分野に大別されると思います。そんな中、すべての技術分野において技術知識を備えることは、一人の弁理士にできることではありません。ですから、
「依頼しようと思っている案件の技術分野に詳しいかどうか」
という意味で、弁理士が持っている技術知識を量ることが大切です。仕事を頼む前に、その技術分野について少し雑談をしてみると、技術者の方であればすぐに相手の力が推し量れるでしょう。
あまり高い水準を求めすぎると、お眼鏡にかなう弁理士は見つからなくなってしまいますが、かといってあまり何も知らない人と仕事をすると、本題に入る前に技術分野の概要説明だけで時間がかかってしまいます。また、同じ弁理士と長く付き合うと、徐々に技術知識が増えていくので、次第に説明が楽になっていきます。その意味では、あまりしょっちゅう弁理士を変えるのは良いことではないと思います。また、付き合い始めた最初のうちは、少々の我慢が必要かもしれません。
反面、随分長く一緒に仕事をしているのに、いつまでたっても技術内容の理解が全く深まらない弁理士がいれば、その人は少し問題がある弁理士ではないかとみるべきでしょう。
その他の重要な能力として「論理的思考能力」というものがあります。
ここのところは、難しい問題でもあるので、回を改めてまた書かせて戴きます。
投稿者 八木国際特許事務所